「漢方医学」についてわかりやすく解説をしていきたいと思います。
まずは、漢方医学の歴史などについてみていきましょう。
【漢方医学の歴史】
東洋医学の中には、中国で発展した中医学、韓国で発展した韓医学、
インドで発展したアーユルヴェーダ、チベットで発展したチベット医学、
そして我が国日本で発展した薬物療法である「漢方医学」があります。
そして、「漢方医学」は、もともと日本に古来からあった「和方」というものに、
中国で発展した中医学と、韓国で発展した韓医学などがミックスされて
日本独自に発展していったものです。
日本では、16世紀以降に発展するようになり、
多くの生薬は海外から輸入する必要があったため、
活発な貿易が行われるようになった
安土桃山時代に一般に普及してきたといわれています。
一方、江戸時代に日本に伝えられた医学である「蘭方医学」は
外科疾患などに強いと評価され、
当初は骨折や傷の手当などを得意としていたようです。
【漢方薬ってどんなもの?】
漢方薬は、自然にある植物の根や花、樹皮、果実など
さまざまな生薬をブレンドして作ります。
伝統的な診断法によって、個々の体を診断してその人にあった生薬を選別、
調合し、もともとは、これらを煮立ててその汁を飲んでいました。
現在もこのようにして煮立てた汁を飲む場合もありますが、
多くの場合は病院で「漢方薬」を処方してもらうという方も多くなってきたようです。
病院で処方される漢方薬や普通の薬局などで売られている漢方薬は、
乾燥したものでそのまま煮立てることなく飲め、
絶妙な割合で生薬がブレンドされています。
例えて言うと、煮立てて飲むものは完全なオーダーメイド処方、
病院でもらうパッケージに入ったそのまま飲めるタイプのものは、
既製品の処方というような感じでしょうか。
近頃は便利になっているようです。
メジャーな漢方薬では、風邪や頭痛、肩こりなどのときに飲む
「葛根湯(カッコントウ)」などが有名ですね。
お持ちのかたは裏面の成分をみていただくと書いていると思いますが、
これも主役である葛根(カッコン)に、麻黄(マオウ)、桂皮(ケイヒ)、
芍薬(シャクヤク)、甘草(カンゾウ)、大棗(タイソウ)、
生姜(ショウキョウ)が含まれています。
これらひとつひとつの生薬によって、痛みをやわらげたり、炎症をしずめたり、
アレルギー症状などを緩和させたり、発汗作用によって熱を自然にさましたりなど、
さまざまな効果をもたらし、体をより良い状態になるように整えてくれます。
漢方医学~西洋医学と東洋医学・漢方医学の違い~
漢方医学の「西洋医学と東洋医学・漢方医学の違い」についてみていきましょう。
もともと日本には西洋医学と東洋医学・漢方医学などがあったようなのですが、
明治時代くらいに西洋から入ってきた西洋医学が主流となり、
東洋医学・漢方医学などは、あまり使わずに下火になったようです。
ですが、近年、西洋医学だけでは治すことができない病気を東洋医学、
漢方医学などで治していこうとするような動きが高まり、
再度漢方がみなおされてきました。
【西洋医学と東洋医学】
西洋医学に分類されているものの中には、
アメリカ医学、ドイツ・ヨーロッパ医学、ギリシャ・ローマ医学、
アラビア・ユナニー医学などがあります。
一方、東洋医学に分類されているものは、日本の漢方医学、中国の中医学、
韓国の韓医学、インドのアーユルヴェーダー、チベット医学などがあります。
少々ややこしいですが、日本では「漢方医学」や
総称の「東洋医学」と呼ばれることが多いようですね。
【西洋医学と東洋医学、漢方医学などは何が違うの?】
では、西洋医学と東洋医学、漢方医学などはいったい何が違うのでしょうか。
たとえば西洋医学では、体を構成している臓器や細胞などに
何か異常がおきることによって病気になると考えます。
体を細分化して考えるのです。
いわば自動車のパーツのように、
エンジンが悪いみたいだから修理するというようなイメージですね。
ですから、どこか悪いところがある場合にはいろいろな検査をして、
何が原因で症状がでているのかなどを調べます。
そして病名が決まり、悪い部分の治療をおこないます。
車もエンジンが悪いと新しいものに取り替えますが、
たとえば大きな胃癌などができてしまったらそれを何とか
すべて取り除けるように切ってしまおうと手術をすることなどが多いようです。
もし体内にウィルスや細菌が入ってきてしまったときには、
病変した部位を排除したりなどして対処することが多いようです。
一方、東洋医学、漢方医学では、体全体を見ます。
どこか一部分だけが悪いというわけではなく、
個々の体質や体のバランスなどを考慮して何かの原因で全体のバランスが崩れたときに
体調が悪くなるというイメージで考えています。
西洋医学のように対処療法だけではなく、体が本来持っている自然治癒力を高めて、
心も体も良いバランスを保てるようにするような治療をすることが多いです。
ざっくりといいますと、
西洋医学は森ではなく木を見る医学、
東洋医学は木だけではなく森を見る医学と言えそうです。
次は、「陰陽」についてみていきたいと思います。
漢方医学~「陰陽」とは~
近頃話題の「漢方医学」についてわかりやすく解説をしていきたいと思います。
【陰陽論について】
東洋医学の理論の中には、「陰陽論」というものがあります。
宇宙、自然、人を統一したものと考えており、少々難しいのですが、
統一体の中には「陰」と「陽」という二つの概念があり、
これらは互いに対立する関係になったり、制約しあったりして存在しています。
このような陰陽に基づいている学説のことを、「陰陽論」と呼びます。
これは古代の中国思想でもあるのですが、
例えば、「上下」であったり、「明暗」であったり、
「大小」「外と内」「雨と晴れ」「男女」「動と静」などもそうです。
非常にたくさんあります。
「昼と夜」などでは、昼が陽となり夜が陰となります。
これらは一日の中でも一定間隔で入れ替わりうまい具合に
バランスが取れていますね。
【体の中の陰陽】
このように、「陰陽」というものがあるのですが、
これは外の世界のものだけではありません。
私たちの体の中にも陰陽があります。
たとえば、「背中」は陽、「胸腹」は陰、
そして小腸、胆、胃、大腸、膀胱、三焦などの「六腑」は陽で、
心、肺、肝、脾、腎などの「五臓」は陰となります。
手足や顔など外に面しているようなものは陽、
体内にある臓器などのようなものは、
体の表面に出ているものに対して陰にあたります。
また、上半身は下半身に対して陽、下半身は上半身に対して陰となります。
【陰と陽のバランス】
健康なときと病気のとき、ちょっと調子が悪いかなというようなときなど、
みなさんも日によってさまざまな体調のときがあると思います。
健康なときには、体内の陰陽のバランスが非常によく、
バランスが保たれている状態といえるでしょう。
一方、なんだか体調が悪いと感じるとき、
病気になってしまったときなどはこの陰陽バランスが崩れているのです。
赤ちゃんや子供は、「陽」が強く
とても元気で走り回っているようなことが多いのですが、
年老いていくにしたがってだんだんと「陰」にかたむいてきます。
漢方医学では、このようにさまざまな原因で
陰陽のバランスが崩れてしまったときに、
体調不良が起こると考えられています。
「陰」と「陽」どちらかに傾きすぎてしまった場合には
それが死につながることも考えられますので注意が必要です。
健康体になるために、体は季節などに合わせてときには発汗する、
汗腺を閉じるなどしてバランスを取るためにさまざまな調整をしているのですが、
それがうまくいかないこともあります。
そのような場合に、漢方医学による治療が体を助けてくれます。
つづいて「五行」についてみていきたいと思います。
漢方医学~「五行」とは~
「漢方医学」についてわかりやすく解説をしていきたいと思います。
【五行論について】
「陰陽五行」という言葉がありますが、
陰陽論に続いて五行論についてみていきたいと思います。
自然界に存在するすべてのものを、
「木」「火」「土」「金」「水」の5つに分類しています。
星やカレンダーの曜日などにも似ていますね。
木が燃えることによって火が生まれます。
そして、火で燃えた木は最後には灰や土になります。
土からは金属の鉱脈ができ、金の鉱脈にそって水も生まれてきます。
水があるところには木が育ちます。
このように自然界にあるすべてのものは循環しています。
これらは、「相生」の関係と呼ばれます。
「木」「火」「土」「金」「水」がこの順番で循環して、
相手を強めるように、作用しています。
一方、「相克」という他の相手を抑制するような関係もあります。
木は土にぐんぐんと根をはって、土は水を吸収したり、せき止めたりします。
水は火を消し、火は金属類を溶かします。金属は木を切り倒すことができます。
このように、
「木」「火」「土」「金」「水」のそれぞれが互いに意味を持っています。
【五行論から医学へ】
このような五行論は、医学へと応用されます。
五行と、体の臓器である「肝、心、卑、肺、腎」の
「五臓」や「六腑」などとも関連させて考えます。
「肝」は、「木」の特性を持つと考えられていたため、
木のように気をめぐらす機能などがあると考えられます。
「心」は、「火」の特性を持つと考えられており、
体全体をあたためる作用があると考えられます。
「脾」は、「土」が持つような、
すべてのものを生化させるような性質があると考えられており、
五臓六腑に栄養を運び、気や血の源となります。
「肺」は、「金」の性質をもち、水を下げて腎をたすけ、
肝の陽気を抑えると考えられています。
「腎」は、「水」の作用を持ち、熱を抑制します。
このように、それぞれが意味を持っており、対応する臓器があります。
季節などにも対応しています。季節は四季ですが、
春夏秋冬に土用が加わります。
「春」は「木」、「夏」は「火」、
「土用」は「土」、「秋」は「金」、「冬」は「水」に対応しています。
ですから、上記で述べたすべてを総合すると
それぞれの季節でそれぞれの臓器が対応していますので、
「夏」は火の特性を持つので、「心」に注意が必要などと
病気が悪化しやすい季節もわかってきます。
五行説のルーツは古代中国の自然哲学などにありますので、
現代では多少の矛盾が生じている場合もあるようです。
日本の漢方医学では、限られた場合の応用として使われているようです。
お次は「気・血・水」についてみていきたいと思います。
漢方医学 ~「気・血・水」とは~
「漢方医学」についてわかりやすく解説をしていきたいと思います。
現代の医療では西洋医学が主流ですが、
西洋医学では「検査結果」をもとにそれが正常か正常でないかという観点で
健康なのか、何かの病気があるのかを判断します。
一方、漢方医学では、陰陽などのバランスや、
「気・血・水」などのバランスをみて判断します。
「気・血・水」は互いに影響しあってバランスをとっており、
大切な人間の生命活動のもとです。
これらに乱れが生じてしまった場合に、病気になると考えられています。
あまりなじみのない言葉だと思いますので、
わかりやすいように西洋医学的に表現しますと、
「気・血・水」は「神経・内分泌・免疫」などに当てはめて考えることもできます。
【気とは】
ではまず、「気」はどのようなものか見てみましょう。
「気」は「血」や「水」を体全体に運ぶ役割をしています。
西洋医学的にいう、「自律神経」や
それらにかかわる器官や臓器などにもかかわりが深く、
全身をくまなく巡っている
いわば「エネルギー」のようなものと考えられています。
自律神経には、交感神経や副交感神経などがありますが、
体中のさまざまな機能などを調節しています。
消化吸収なども「気」が調節していると考えられています。
「気・血・水」の三つの中でも「気」は特に重要なもので、
正常な生命活動を保つために活躍してくれています。
「気」が乱れると、気が逆流してしまったり、気が滞ったり、
気力がなくなってしまう状態になることがありますので注意が必要です。
【血とは】
「血」と聞くと、単なる「血液」だけを想像する方も多いかと思いますが、
「血液」だけを表すものではありません。
「血」は体を循環し、体中に栄養を運び、老廃物を流す役割があり、
そのほかにもホルモンの分泌の調整や、
体内全体の環境を整えるような役割も担っています。
西洋医学的には、「内分泌」と表現されるような、
血液やホルモンなどの「体液」のようなものです。
【水とは】
「水」は体にうるおいを与えます。
また、外部からのウィルスや細菌類などから体を防御するような
免疫系の働きをしてくれます。リンパ液なども「水」の一部です。
皮膚や粘膜を丈夫にするような役割も担っています。
この三つ、「気・血・水」がバランスがよいときに
健康な状態ということになります。
理想的な健康状態のことを「中庸(ちゅうよう)」といいます。
最後に
西洋医学では、検査結果が異状なしであれば
何かの「病気」とは診断されないことが多いですが、
漢方医学では、これらの「気・血・水」にひとつでも異常や乱れがあれば
「未病(みびょう)」の状態と考えられます。
「未病」とは、まだ病気にまでは至っていないけれど、
このまま調子を崩してしまい、体のバランスが悪くなってしまうと、
「病気」になってしまいます。
「未病」はその前段階になりますので普段から体のバランスを良くし、
病気になってしまう前の「未病」の状態で調子をととのえられるように
気を付けたいものですね。
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